©Laurent Philippe
音楽を勉強していた15歳の時にダンスに出会い、このシューレーヌ・シテ・ダンスフェスティバルにダンサーとして出演し始めてから10年がたった今年、ガロワは振付家として作品を上演することになった。今やダンス界で注目される若手振付家となり、BNPパリバ財団が助成するアーティストにも選ばれたのは、太鼓判が押されたようなもの。ガロワの成長に、フェスティバルのディレクターは目をほころばせる。子供が立派に育った親の気持ちだろう。プレルジョカージュや伊藤郁女の作品に出演するなどして、ダンサーのキャリアを積むと同時に、振付家としても着実な進歩を見せている。自作自演の「P=mg」は各地のコンクールで賞を取り、その後もソロ作品「Diagnostic F20.9」、デュエットの「コンパクト」、トリオの「カルト・ブランシュ」と少しずつ出演者を増やし、今回は5人のダンサーによる「クインテット」。これは、息の合わないダンサーたちのリハーサル風景を描いていて、自己主張の強いメンバーの間ではありがちな光景を、簡単なセリフと綿密に構成されたダンスで見せた。
「そうじゃないでしょ」
「何で、僕はちゃんとこうしたのに、君が」
「そんなことないわよ」
「じゃあ、やり直し」
「ほら、また~、音響さん音止めて!」
感情がエスカレートして、怒鳴り合いが始まると同時に、ああでもないこうでもないと動き回る。日常の動きをヒップホップ調のムーブメントで連ねる。コマ送りだったり繰り返しだったり、ブレイクだったり、そして時々アクロバットが入る。ふたりの言い争いに3人目が飛び込む一方で、別の場所でふたりが取っ組み合いをしている。あっちでギャーギャー、こっちでワサワサ、てんやわんやのリハーサル風景だけれど、この混乱状態が見事にダンスで構成されていた。ソロがデュエットになり、いつの間にかユニゾンになり、そしてまた弾けてはくっつき、バラバラになるという、変化に富んだ構成が面白い。個性豊かで自己主張の強いダンサーをまとめるのは、容易ではなく、振付しながらこんな場面ありうるよねって、同情しながらも笑ってしまう。ジェスチャーや短いセリフを織り交ぜてアクセントをつけ、テンポのよい展開と、きっちりと構成されたダンス作品に仕上がっていた。この後3月末には、パリのシャイヨ国立劇場でも上演される。
http://theatre-chaillot.fr/jann-gallois-quintette
ちなみに現在、シャイヨ国立ダンス劇場とリヨンのメゾン・ド・ラ・ダンスの提携アーティスト。期待の注目株だ。(2月4日シューレーヌ・シテ・ダンス・フェスティバル)
「コンパクト」の動画が、下記のリンクでご覧いただけます。
https://vimeo.com/234879934
*シューレーヌ・シテ・ダンス・フェスティバルは、コンテンポラリーダンスっぽいヒップホップ作品が多いので気に入っている。毎年1月中旬から2月初めにかけて開催されていて、パリから無料の送迎バスが出ているので、安心していけるのが嬉しい。今年も面白そうな作品がずらりとあったのに、1作品しか見られなかったのが心残り。
https://www.suresnes-cites-danse.com
©Laurent Philippe