ユーロ・ダンス・インプレッション

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レティシア・プジョル引退公演©Julien_Benhamou / Opéra national de Paris

9月には、テアトル・ド・ラ・ヴィルで2年に1回行われるコンクール、ダンス・エラルジーのファイナリストによる単独公演があり、クレテイユのMACでは新人振付家などの見本市、そして、オペラ座ではエトワールのレティシア・プジョルの引退公演などがあったが、諸事情で逃してしまった。
2017/18年の各劇場のプログラムをざっと見ると、再演が目立つ。知っているから目につくのかもしれないけれど、筆頭にあげたいのが11月のジェローム・ベル特集。新作を含めて「ジェローム・ベル」「ショー・マスト・ゴー・オン」など主要7作品がずらり。コールドバレエの実態を描いた、元オペラ座ダンサーのヴェロニク・ドワノーによる「ヴェロニク・ドワノー」は無料上映! ここまでやってくれるとはありがたい。その他では夏のフェスティバルで上演されたものがプログラミングされていることも多く、ふふふ、私はもう見たぞ! なので、これから公演を見ようという方は、このコラムの16/17年のフェスティバルを参考にすると良いかも、です。
再演はちょっと…とは思うことなかれ。作品は生きているもの。毎回違うし、出演者が代わればまた違うし、振付家が手直しを入れる場合もある。見逃した作品であれば、ラッキー。ビデオでは見えないものが劇場では見られます。


レティシア・プジョル引退公演©Julien_Benhamou / Opéra national de Paris


レティシア・プジョル引退公演©Julien_Benhamou / Opéra national de Paris


©Geraldine Aresteanu

「歴史的建造物の中で芸術を」という企画の第3弾。ジャン=クロード・ガロッタの後を引き継いでCCNグルノーブルの撃術監督に就任したヌーボーシルク(ダンスとジャンル分けする劇場もある)の旗手ヨアン・ブルジョワの公演がパンテオンで行われた。
偉人たちを祀る霊廟の夜というのは、非常に厳かなものを感じる。高い天井にできた光と陰、聖人たちもどこかで見ているのかも。ワクワクしながら靴音が響く内部を進むと、中央の円形スペースで、半円形の台の上に乗った白いドレスの女性がじっと立っている。男が手のひら大のボールを引いて手を離すと、それはゆったりと弧を描いて揺れ始めた。そう、ここはフーコーの振り子が実験された場所なのだ。金色の振り子が揺れる中、女性もゆったりと揺れ始めた。体が床に平行になる程傾き、向きをゆっくり変えながら揺れている。時を刻む振り子の横で、人の歴史も刻まれる。
これを演じていたのが津川友利江さん。バレエ・プレルジョカージュから移籍しての初出演。今後のさらなる活躍を期待しています。
この中央のスペースを中心に、4つの翼に装置が置かれ、観客は4手に分かれてそれぞれのパフォーマンスを楽しむことになる。
「エネルギー」と題されたのは、オレンジ色のラビリンス。円柱形の装置に上りと下りの階段があり、そのひとつはさらに登るが、空中で途切れている。ゆったりと回り始めた装置から、はじき出された男は階段を上り、そして降りる。まるで永遠に歩き続けるかのように。するともうひとりの男が建物から現れ、そしてまた別の場所から中に姿を隠した。この回り続けるラビリンスは、まるでバベルの塔。そしてそこにはたくさんの扉があり、誰ともすれ違うことなく行き交っている。階段に座り込んだ男は、するすると飲み込まれ、階段から落ちた者は、何事もなかったように元の場所に戻る。まるで時の流れから外れ、重力からも解放されて別世界に吸い込まれ、そこからふぅっと戻ってくるかのように。そして途切れた階段を登りつめ、パンテオンの高いドームの天井に向かって手を伸ばし、掴みたくてもつかめない何かに絶望感を感じながら落ち、しかし再び挑戦するかのようにその場に戻ってくる。 決して手にすることができないものを求めてやまない人の欲望と虚無感。それは蜘蛛の糸だったのかもしれない。
次の翼では、ぐるぐると回る正方形の台の上に男と女。台の回転に逆らって歩けば、対極にいるふたりが出会うことはない。しかし、男が歩くのをやめれば、あっという間に女のところに戻される。その出会いの瞬間に男が再び歩き始めて女が止まれば、ふたりはまた離れてしまう。行き違い、それとも意識的に避けている? 会いたいけれど会えない、それとも会いたくない? 微妙な男女の関係は、「Inertie/惰性」と題されている。
宙に浮かんだ女性は、ゆったりと空を泳いでいる。「Trajectoire/軌道」、無重力の世界、ここは時の流れが違う空間だ。敷き詰めてあった石を拾い、落とす。石が落ちる速度と女性が移動する速度の差。ひとつの空間の違う世界。
「バランス」は、1本足の大きな台が舞台。男女はそれぞれの場所から、椅子を乗せ、自分も上がる。ちょっとした体重の移動でも机は大きく傾くから慎重に。慎重に進んでようやくふたりは真ん中の机で向かい合って座ることができた。
空中遊泳、回転台、途切れた階段などは、ブルジョアの作品で何度か見ているが、毎回異なる趣向が加えられ、新たな作品に仕上げている。アクロバットは目先を喜ばすだけの手法で終わりがちだが、ブルジョアはそこに日常的な感情を取り入れ、人生を反映しているから、いつまでも心に残る。
永遠に揺れ続ける振り子と、かぎりのある命。宇宙と人。パンテオンという特殊な場所を十分に生かした構成だった。(10月12日パンテオン/Théâtre de la VIlle)


©Geraldine Aresteanu


「ダイヤモンド」©Julien_Benhamou / Opéra national de Paris

ミルピエ前芸術監督時代以降、バランシン作品の上演が増えたことは良いことだと思うけれど、その一方でパリ・オペラ座独特の演目が影を潜めてしまいそうなのが少し寂しい気もする。とは言え、華やかな「ジュエルズ」をシーズン開幕に持ってきたのは、オペラ座の華々しく豪華な1年の始まりの予感をもたらしてくれた。

まずは衣装と装置の美しさに目が奪われる。幕が開いた途端、息を飲む音に続いて歓声と拍手が巻き起こった。豪華で品があり、エレガント。衣装と美術を手がけたクリスチャン・ラクロワの手腕が光る。極上の美は、人の心を豊かにしてくれると、つくづく思った。

「エメラルド」では、アリス・ルナヴァン、セウン・パク、オニール八菜がメインを踊った。ルナヴァンはいつも通り安定し、力強い踊りを見せた。カール・パケットに代わりフロリアン・マニュネがパドドゥの相手役を務め、丁寧なサポートにふたりの安定感は際立っていた。セウン・パクはオードリック・ベザールと第2のパドドゥを踊ったが、ベザールの機微な動きとパクのしなやかな流れがよく調和していた。オペラ座にはないアジア人の繊細さが、新鮮な風をもたらしている。オニール八菜は、ロレーヌ・レヴィとジェレミー=ルー・ケールとのパ・ド・トロワ。そつなくこなしていた。

「ルビー」は、期待していたレオノール・ボーラックが降板して、シルヴィア・サン=マルタン。シャープで悪くない。相手役はポール・マルク。まだスジェだけれど、将来が期待されているダンサーだ。その期待は裏切られず、軽快で、ブレのない踊りが爽やかだった。もうひとりメインで踊ったイダ・ヴィキンコスキ。オペラ座バレエ学校を出ていないダンサーには、ある種の新鮮さがあり、良い意味での広がりを感じた。ブロードウエイのミュージカルを見ているような艶やかさがあるルビー。赤く輝く宝石の妖艶さを存分に発揮していた。
そして「ダイヤモンド」。幕が開いた時の歓声が一段と高くなったほどの美しさに、心が洗われる。そしてリュドミラ・パリエロとジェルマン・ルーヴェの、装置に引けを取らないノーブルな存在感。パリエロは足先にまで気品がある。ただ歩くだけなのに、その丁寧なつま先の動きに目を奪われた。相手役のジェルマン・ルーヴェは、ここ数ヶ月でさらなるエレガントさを身につけた。女性をサポートする時の足さばきの洗練されていること。そして、アントゥールナンの着地の完璧なこと。エトワールの道を堂々と歩んでいる。(10月11日オペラ座ガルニエ宮)


「ルビー」©Julien_Benhamou / Opéra national de Paris

軽快な生演奏のパーカッションに合わせて、14人のダンサーが弾けていた。
自然と人間を表したかったというブランカ・リーは、ピエール・アトレの美術で風、炎、嵐などを表した。布でできた雲のオブジェが床に降りてくれば、まるで雲の中で踊っているよう。それがいつのまにか森になり、白い布に巻かれてなびいている。衣装が変わり、たくさんの要素があるけれど、それ以上に圧倒されたのが、ダンサーのエネルギーだった。ヒップホップ、アフリカン、コンテンポラリーダンスが交差し、声を発し、足音が音楽にもなる。ソロありデュエットありユニゾンあり、14の異なる個性が弾け、テンポよく構成が変わっていく。正直言って、美術など目に入らなかった。ひとりひとりのダンサーの動きが面白いし、何よりダンサーが楽しんで踊っているのが伝わってきて、そのエネルギーに浮かれて自然と体がリズムを刻んでしまう。楽しいことが大好きなブランカ・リーらしい作品だった。 (10月13日シャイヨ国立ダンス劇場)


©Nico Bustos

大駱駝艦、再びフランスに嵐をもたらす
舞踏はフランスでも定着し、動かずに内面を表すのダンスだと思い込んでいた人には、あまりにも衝撃的だった大駱駝艦公演。このアバンギャルドさが大受けで、初上陸以来引っ張りだこ。今年は3作品を引っさげてやってくる。
ポワチエ TAP 11月16〜17日「パラダイス」
http://www.tap-poitiers.com/paradise-2162

パリ パリ日本文化会館
11月23日〜25日「阿修羅」
11月30日〜12月9日「パラダイス」
https://www.mcjp.fr/fr/agenda/dairakudakan

ナンテール メゾン・ド・ラ・ミュージック
12月15〜16日 「クレージー・キャメル」
https://www.maisondelamusique.eu/saison-2017-2018/compagnie-dairakudakan-crazy-kamel/

演出の魔術師オーレリアン・ボリーの「Espaece」

舞台の魔術師と言われているオーレリアン・ボリー。アクロバットサーカス集団カンパニー111を率いているが、それ以外にも多くのアーティストとコラボレートし、その演出には毎回度肝を抜かれている。日本では伊藤郁女とのコラボレーション「プレクシュス」で、すでに彼の魔術に魅了された人も多いと思う。そのボリーの「Espaece」がパリの市立劇場テアトル・ド・ラ・ヴィルとの提携でソンキャトル/104で行われる。昨年のアビニヨンフェスティバルで見たが、まるで手品のように変わる巨大な装置に驚き、皮肉やユーモアに笑ったのをはっきり覚えている。ぜひ。
12月7日〜13日 104にて
http://www.theatredelaville-paris.com/spectacle-espaeceaurelienbory-1224

http://www.104.fr/fiche-evenement/aurelien-bory-espaece.html

     

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