ユーロ・ダンス・インプレッション

Recent Impression

1990年にリヨン・オペラ座バレエ団で初演し、その後の1996年に自身のカンパニーで再構築された「ロミオとジュリエット」。今回これが3度目の所見となったが、20年ほど前に見たときの感動がそのままに蘇った。
下手の、近未来をイメージするような建物から現れた男たち。体にフィットした黒い服とヘルメットを被り、ティボルトを先頭に、一糸乱れずに歩き、踊る様は、ロボットか軍隊のよう。その対面の上手には、崩れかけた壁にもたれて寝ている男たちがいる。色とりどりの服はくたびれて穴があき、壁の隙間からはネズミのように人が這い出してくる。エンキ・ビラルの装置と衣装は、プレルジョカージュの創造力を掻き立て、シェークスピアの原作と、プロコフィエフの曲を元にした、新たな物語が生まれている。
見所は何と言ってもロミオとジュリエットの愛の踊りだろう。夜の庭での再会、そしてロミオが死んだ後のジュリエットの踊りのシーンは、何度見てもウルウルしてしまう。数年前にパリで再演された時の批評は、どれを読んでも「古さを感じさせず、新たな感動に包まれた」と書いてある。これがプレルジョカージュの手腕なのだ。もちろん、16世紀に書かれた作品が今だに読み継がれているというシェークスピアの才能にも由来するものだが、それをいかに感動新たにさせるかが、現代の演出家の腕の見せ所であり、プレルジョカージュ版は、後世に残る作品となるだろう。


©Jean-Claude Carbonne

世間を知らずに育ったジュリエットの無垢な、あまりにも純粋な描写が愛らしい。ロミオと出会い、ひたすらロミオを求める姿。それは本能が赴くままで、なんの疑いもない。夜の庭での密会では、ロミオの口づけを一度は躊躇するものの、その後すぐに飛びつくように唇を求め、その勢いにロミオは後ろに倒れてしまう。口づけしながらゆっくりと崩れるふたりの姿に、一途な愛の美しさを感じずにはいられない。ティボルトの前では顔も上げられずに言いなりになっている姿とは対照的だ。
そして、ロミオが死んだことを信じようとしないジュリエットは、ロミオが以前にしてくれたこと、相手の手を自分の背中に回して、抱いてもらおうとする行為を繰り返すも、手はだらりと落ちてしまう。それでも信じようとしないジュリエットは、ロミオを椅子に座らせ、そこに勢いをつけて飛び込んでいく。支えてくれないから、ジュリエットは床に転がり落ちてしまう。何度やっても同じこと。昔のようにロミオは抱きしめてくれない。このシーンは何度見てもジーンとくる。
それぞれの人物の個性を強調する振り付けがいい。ベンヴォーリオが腹に一撃を受け、それでもティボルトとその手下をからかいながらフラフラと踊る様子や、黒半分白半分の服を着た双子の乳母の、からくり人形のような滑稽な動きなど、豊富なボキャブラリーの振り付けは、飽きることがない。決して簡単ではない振り付けを踊りこなしたダンサーたちも圧巻だった。ユニゾン、特にキャピュレット家の人たちの群舞は、手足の角度が一部とも違わぬ見事なもので、非常にしっかりとした指導のもとに鍛えられたダンサーのレベルには、目を見張るものがあった。そして、地方劇場の、初日ではないにもかかわらず、プレルジョカージュがカーテンコールで挨拶したことは、振付家が作品とダンサーを大切に思っている証拠だと思った。(3月28日クレルモン=フェラン/ラ・コメディ劇場)


©Jean-Claude Carbonne

3月31日マリー=アニエス・ジロは、ピナ・バウシュの「オルフェとユーリディス」を踊り、エトワールとしての座を去った。手足の長さとダイナミックな踊りは、特にコンテンポラリー作品で発揮され、エトワール任命は、カロリン・カールソン振り付けの「Signe」だった。フォーサイス、デュアト、マクレガーなどの作品が特に印象に残っている。2月下旬のベジャールの「ボレロ」では、ジロならではの踊りを見せた。引退公演の様子はテレビでも放映された。まだまだ踊るとは言っていたが、最近のインタビューではひとり息子との時間を大切にしたいと、しばらくは活動を停止するような発言も。モード界ともつながりがあるので、今までとは違ったジロの一面が見られることを期待したい。


©Laurent Philippe

ダンスとコンピューターの究極のコラボレーションとは何か。今までにない新しい世界を求めるコンペティションが、9月末にリヨンで開かれる。リヨンのメゾン・ド・ラ・ダンス、ロンドンのサドラーズ・ウエルス劇場、リールのリエージュ劇場の提携のもと、BNPパリバ財団の資金援助を受けて立ち上がった企画「DANSATHON」。ダンスとコンピューターが織りなす新しいアイディアを思いついたら、ぜひ応募してみよう。参加費はなく、最終選考に選ばれた企画考案者は、リヨン・ダンス・ビエンナーレの最終日3日間の間に企画を発表。この間の滞在費も無料で、最優秀企画には1万ユーロの制作費が与えられる。

http://www.dansathon.org/DansathonAccueil?

ランコントル・コレグラフィック・アンテルナシオナル・ドゥ・セーヌ・サンドニ

若手振付家の登竜門と言われるランコントル・コレグラフィック・アンテルナシオナル・ドゥ・セーヌ・サンドニが、今年は5月16日から1ヶ月間開催される。
開幕を飾るのがマルコ・ベレッティーニということが証明するように、ジャンルを超えた表現でダンスの可能性を無限大に広げる作品がずらり。ダンス、ノンダンス、無言劇、身体表現、このような言葉の定義を考え直したくなるような作品が多く、見た後にたくさんの疑問が湧いてくることがよくあるのだが、その数年後には世界中で話題になるアーティストが続出する、一味変わったフェスティバルだと私は思っている。今年は一体何が飛び出すのだろう。

http://www.rencontreschoregraphiques.com/festival


ジュン・イヴェンツ

パリ市のヴァンセンヌの森の中で行われるダンスフェスティバルJUNE EVENTS。カロリン・カールソン率いるCNDCアトリエ・ド・パリ主催で、会期は6月2日から22日まで。若手の精鋭が競うダンスの祭典で、交通の便が悪いにも関わらず、会場は常にほぼ満席という人気のフェスティバル。パリなのに森の中でダンスを見るという環境も抜群。パリ市内の公園や博物館などで行われる無料公演もある。

http://atelierdeparis.org/fr/june-events


フェスティバル・モンペリエダンス

38回目を迎える今年のモンペリエダンスは、6月22日から7月7日まで。人気のカンパニーが勢ぞろいしたプログラムは、モンペリエならではだ。
フォーサイス率いるフランクフルトバレエ団に長く所属し、現在はドレスデン・フランクフルト・ダンスカンパニーの芸術監督のヤコポ・ゴダニが開幕を飾る。フォーサイス張りの超テクニックなシーンが期待される。気になるのが、バットシェバ・ダンスカンパニーが、ナハリンの作品ではなく、新鋭振付家のマルレーヌ・モンテイロ・フレイタスの作品を踊ること。これは容易に想像できない組み合わせで、超ハチャメチャになるかも。パリ・オペラ座のエトワールだったジョゼ・マルティネズ率いるスペイン国立ダンスカンパニーは、フォーサイスの夕べ。マルティネズの作品が見たかったな、とは思うものの、ナチョ・デュアトの後を引き継いで、カンパニーがどのように変わったかが見もの。もうひとりオペラ座の元エトワールのカデル・ベラルビ率いるバレエ・デュ・キャピトルは、ロイ・アサフ、ヤスミン・ゴデール、ヒレル・コガンのイスラエル系の振付家3人による作品を上演。そして、最後はNDTで締めるという豪華版。パリでは滅多に見られない作品がずらりと並ぶ。これに加え得て、アクラム・カーン、オーレリアン・ボリー、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル、ヒップホップではフランス第一人者のムラド・メルズキとカデール・アトゥのコラボ新作や、異色の体当たりダンスが期待されるシルヴァン・ウク、ジョセフ・ナジのあとを継いでオルレアンのCCN芸術監督となったモー・ル・プラデック、いくつものコンクールで受賞しているナイーフ・プロダクション、様々なアートを混ぜ合わせた大胆な演出で注目されているフィア・メナールなど、全公演見たくなってしまうプログラム。

http://www.montpellierdanse.com


ユゼス・ダンス

南仏のダンスフェスティバルはここから始まる。23回目を迎えた今年は、6月13~17日まで。超アバンギャルドなダヴィデ・ヴォンパクから、ライムント・ホーゲの作品で有名なエマニュエル・エゲルモンなど、独特な路線を行く若手がメインのフェスティバル。CDCNだけれど、今年から「ラ・メソン」となって、さらなる活動を広げる模様。

http://www.lamaison-cdcn.fr


アヴィニヨン・フェスティバル

世界最大級のアヴィニヨン・フェスティバル。演劇が中心だけれど、ダンスももちろん! 7月6日から24日までの約3週間、オフと合わせて町中が熱くなる。気温も暑いが。。。
ダンスでは開幕を飾るのが、ロシオ・モリーナ。注目を集めるコンテンポラリーフラメンコのダンサーで、男まさりのパワーと自由な発想で、観客を一撃すること間違いなし。サシャ・ワルツ、ライムント・ホーゲなどの超有名アーティストに混ざって、フランソワ・シェニョー、フィア・メナールなどが初登場。エマニュエル・ガットは最高峰と言われる法王庁の庭での上演。アラブの文化を携えたアリ・シャルールが戻ってくる。演劇といえど、ダンスとの垣根は低くなっていて、フィジカル系無言劇もありそうなので、演劇部門もチェックしたい。

http://www.festival-avignon.com/fr/


アヴィニヨン・オフ

オフのおかげで、アヴィニヨンが盛り上がるといっても良いほど熱いフェスティバル。熱いというか、はちゃめちゃというか、何でもありというか、でも真面目。学校がオフ村や劇場になるので、夏休みに入った翌日の6日オープン。でも実は、翌日は模様替えで忙しいので、翌々日から始まると思って欲しいというのが本当のところ。もちろん6日から上演するところもあるし、路上パフォーマンスもある。今年の詳細はまだ発表されていないけれど、ホテルの予約はお早めに。すぐに満室になってしまう。

http://www.avignonleoff.com

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